保育の処遇改善等加算と保育士の給与

制度の概要

保育の処遇改善等加算は、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲの3種類の加算があります。現制度(2024年3月時点)の処遇改善等加算について簡単に説明したいと思います。

(Ⅰの加算額)

Ⅰは児童数×Ⅰの単価合計×加算率で加算額が決まります。加算率は職員一人当たりの平均経験年数で決まり、基礎分と賃金要件改善分に分けることができます。職員に支給しなければいけない部分は賃金要件改善分のみです。

(Ⅱ及びⅢの加算額)

Ⅱ及びⅢは児童数から加算対象職員数を求めて、それに単価をかけて加算額が決まります。ⅡとⅢの加算対象職員数はそれぞれ求め方が違いますが、加算額算定の考え方は同じです。

実績報告について

毎年、施設は行政に処遇改善の報告をする必要があります。その際、Ⅱ及びⅢについては、もらった加算額を職員に支払っているか報告します。Ⅰについては、基準となる年度(原則前年度)と同じ水準を支払っているか報告します。ただし、新たにⅠをもらう場合などは、Ⅱ及びⅢと同様にもらった加算額を職員に支払っているか報告します。

人件費の改定分

国家公務員の給与が改定されると、それに伴って公定価格の人件費部分も改定されます。公定価格とは施設収入の基礎となる単価です。

令和5年度の公定価格においては、保育士等人件費が5.2%程度引き上げられました。この人件費の改定分(公定価格の増額分)も職員に支給する必要があります。

金額はⅠと同じ考え方で、児童数×Ⅰ単価合計×改定率(令和5年度は原則5.2%)です。インフレの影響で、5.2%となっており、例年と比べて大きな金額となっています。

国の資料(事務連絡)では、各市町村に対して、『改定の影響額(追加支給見込額等)を算定し、各施設にすみやかに周知すること。』との記載があります。しかし、私が知る限り、こうした周知を行ってない市町村もあります。

金額算定の考え方は上記の通り、シンプルなものです。インフレに対応した人件費の改定分が保育士等の職員給与に反映されるよう、施設担当者や市町村は確認する事が必要です。

今後の展望

今後はⅠ、Ⅱ、Ⅲは統一され、よりわかりやすくなる予定です。

現状、賃金水準を基準となる年度と比較することで、実績報告がされています。処遇改善加算を給付しつつ、他の手当を下げる事を防ぐために、これは必要なことだと思われます。

しかし、適切な賃金水準が設定されているか一人一人の職員について賃金水準をチェックするのは、行政の事務負担を考えれば、現状では事実上不可能です。よって残念ながら、形だけの実績報告となっています。

今後は給与情報の公開も予定されているため、こうした給与データを利用した、AIやシステムによるチェック体制が構築され、正しく処遇改善が福祉職員の給与となることを望みます。

保育士の給与について

公定価格の人件費分と処遇改善を合わせれば、公務員並みの給与水準にすることも可能であり、現状言われている、保育士の低賃金問題ついては、施設収入以外の要因であると思います。

今後給与データは公開になる予定ですが、保育士はこうしたデータをもとに、しっかり給与を支払う施設で働くことを選択してほしいです。

また利用者についても、今後はこうしたデータを参考に子供を預ける施設を決めることができます。